企業・団体向けワーケーションを成功に導く地域選定と実践ガイド~地域連携とチームエンゲージメント向上を目指す~
企業の皆様におかれましては、社員の働き方改革や生産性向上、エンゲージメント強化に向け、様々な施策を検討されていることと存じます。その中でも、ワーケーションは、リフレッシュと業務遂行を両立させながら、チームビルディングや地域貢献といった多角的な価値を生み出す施策として注目を集めております。
本記事では、企業の総務・人事担当者の皆様が、チームや部署単位でのワーケーションを企画・実施する際に役立つ具体的な情報を提供いたします。適切な地域選定のポイントから、企業利用に特化した施設要件、さらにはチームビルディングや地域貢献に繋がるプログラムの企画方法、スムーズな実施に向けたプロセスまで、実践的な視点から解説してまいります。
企業・団体ワーケーションがもたらす多様な価値
ワーケーションは、単なる休暇の延長ではなく、企業活動に複数のプラスの効果をもたらす戦略的な取り組みです。
- 生産性向上とイノベーション促進: 日常のオフィス環境を離れることで、新たな視点や発想が生まれやすくなります。集中できる環境での業務は、生産性の向上に寄与し、偶発的な交流からイノベーションの種が生まれる可能性もございます。
- 従業員エンゲージメントとリフレッシュ: 非日常的な環境での業務と余暇の融合は、従業員の心身のリフレッシュを促し、仕事へのモチベーションやエンゲージメントを高めます。福利厚生の一環としても、従業員の満足度向上に繋がります。
- チームビルディングと組織力強化: 共同生活や共体験を通じて、メンバー間のコミュニケーションが活性化し、相互理解が深まります。これにより、チームの一体感や協力体制が強化され、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。
- 地域貢献とSDGsへの寄与: 地方に滞在し、地域の施設を利用したり、地元経済に消費をもたらしたりすることは、地方創生に貢献します。また、地域課題解決型のプログラムに参加することで、企業のSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みとしても位置づけられます。
団体ワーケーション先選定の重要ポイント
ワーケーション先の選定は、その成否を左右する重要な要素です。特に企業・団体利用においては、以下のポイントを網羅的に確認することが推奨されます。
1. ワーキング環境と施設要件
チーム全員が快適に業務を遂行できるよう、施設が提供するワーキング環境の詳細を確認します。
- 会議室・共有スペース: チームでのディスカッションやプレゼンテーションが可能な会議室や、大人数が利用できる共有ワークスペースの有無、それぞれの収容人数と設備(プロジェクター、ホワイトボードなど)を確認します。
- ITインフラ: 高速かつ安定したWi-Fi環境の提供は必須です。加えて、各席における電源の確保、モニターの貸し出し、Web会議用の設備(マイク、カメラ)なども確認すると良いでしょう。
- 多様なワークスペース: 集中して作業できる個室や半個室、リラックスしてアイデアを出し合えるラウンジなど、用途に応じた多様なスペースがあると、より生産的な活動が期待できます。
- 宿泊キャパシティと部屋数: チーム全体の宿泊が可能な部屋数と、想定される最大人数を確実に受け入れられるかを確認します。個室の他に、複数名で利用できる部屋の有無も考慮に入れると良いでしょう。
2. 企業向けプランと料金体系
企業としての利用には、法人向けの柔軟な対応や明確な料金体系が求められます。
- 法人契約の可否: 法人名義での契約が可能か、請求書払いなど企業経理に対応した決済方法があるかを確認します。
- 企業向け特別プラン・割引: 団体利用や長期滞在に対する割引、会議室利用を含んだパッケージプランの有無などを確認します。
- 見積もりプロセスと料金目安: 明確な料金体系が提示されており、人数や期間に応じた概算費用を迅速に提示してもらえるか、見積もり依頼から回答までの期間なども事前に確認するとスムーズです。
3. 安全性と信頼性
社員の安全確保と企業としての信頼性は最優先事項です。
- セキュリティ体制: 施設の入退室管理、防犯カメラの設置、夜間の警備体制など、安心して滞在できるセキュリティが確保されているかを確認します。
- 感染症対策: 消毒液の設置、定期的な換気、検温体制など、最新の感染症対策が講じられているかを確認します。
- 緊急時対応: 火災や自然災害発生時の避難経路、緊急連絡先、医療機関との連携体制など、万一の事態に備えた対応マニュアルや体制が整っているかを確認します。
- 企業利用実績・事例: 過去に他企業が利用した実績や事例があれば、具体的なイメージを掴みやすく、信頼性の判断材料となります。
4. 交通アクセスと周辺環境
移動のしやすさや滞在中の利便性も、ワーケーションを円滑に進める上で重要です。
- 主要都市からのアクセス: 主要な空港や駅から施設までの交通手段(電車、バス、送迎サービスなど)と所要時間を確認します。
- 移動の利便性: 施設までのアクセス路の状況、駐車場スペースの有無、貸切バスの乗り入れ可否なども確認すると良いでしょう。
- 周辺環境: 食事処やコンビニエンスストア、スーパーマーケットといった生活インフラ、緊急時に対応可能な医療機関の有無も把握しておくと安心です。
チームビルディングと地域貢献を両立するプログラム企画
ワーケーションの醍醐味は、単なる業務遂行に留まらず、地域との繋がりやチームの一体感を育む体験にございます。
1. 地域資源を活かした体験プログラム
滞在先の地域の特色を活かしたプログラムは、社員のリフレッシュと地域理解を深める貴重な機会となります。
- 体験型プログラム: 地域の農家や漁師と交流する農業・漁業体験、伝統工芸品制作体験、歴史文化に触れる地域散策ツアーなどが挙げられます。これらは、非日常的な体験を通じてチームメンバー間の新たな一面を発見する機会にもなります。
- 地域住民との交流会: 地元の方々との交流会を企画することで、地域の温かさに触れるだけでなく、異なる価値観や視点に触れる刺激を得られます。
- 地域課題解決ワークショップ: 地域の抱える課題(観光振興、環境保全、高齢化など)について、地元の方々と共に議論し、解決策を考えるワークショップ(アイデアソン、ハッカソンなど)は、社員の課題解決能力を養う研修要素としても非常に有効です。
2. リフレッシュと交流を促進する周辺アクティビティ
業務の合間や終了後に、チームメンバーが共に楽しめるアクティビティを用意することで、交流を促進し、心身のリフレッシュを促します。
- 自然の中でのアクティビティ: 豊かな自然環境であれば、ハイキング、サイクリング、カヌー、星空観察などが可能です。体を動かすことで気分転換になり、共同体験がチームの絆を深めます。
- 地域施設利用: 温泉施設での入浴や、地域のスポーツ施設(体育館、グラウンドなど)の利用も、リラックスや健康促進に繋がります。
- 地域イベントへの参加: 滞在期間中に地域の祭りやイベントが開催されていれば、参加を検討するのも良いでしょう。地元の方々との自然な交流が生まれ、地域の魅力を肌で感じられます。
ワーケーション実施に向けたスムーズなプロセス
実際にワーケーションを企画・実施するにあたり、以下のプロセスを事前に確認しておくことで、円滑な進行が期待できます。
1. 問い合わせ・相談窓口
施設側が法人利用に対する専門の窓口や担当者を設けているかを確認します。
- 企業専任担当部署: 法人営業部門や団体利用専門の担当者がいる場合、企業のニーズを理解した上でスムーズな提案や対応が期待できます。
- 問い合わせ方法: 電話、メール、専用フォームなど、企業の問い合わせ窓口(総務部や人事部など)にとって最も利用しやすい連絡方法を確認します。
2. 契約・予約手続き
- 見積もり依頼から契約まで: 見積もりの依頼方法、必要情報の提示、契約書の取り交わしなど、一連の手続きの流れを事前に確認します。
- 利用規約・キャンセルポリシー: 団体利用における特別な規約や、キャンセル時の規定(料金、期限など)を詳細に確認し、社内規定との整合性を図ります。
- 支払い条件: 支払い方法(銀行振込、クレジットカードなど)や支払い期日、分割払いの可否などについて確認します。
3. 事前準備と社員への周知
- 社内規定の整備: ワーケーションを福利厚生として導入する場合、その位置づけや利用条件、費用負担、勤務時間管理などに関する社内規定を整備し、明確化します。
- 目的の共有と説明会: ワーケーションの目的(生産性向上、チームビルディング、地域貢献など)を社員に明確に伝え、参加意義を理解してもらうための説明会などを実施します。
- 情報共有: 施設情報、スケジュール、持ち物、緊急連絡先など、ワーケーションに必要な情報を事前に社員に周知します。
まとめ
企業・団体向けのワーケーションは、社員のウェルビーイング向上と生産性向上を両立させながら、チームの一体感を強化し、さらには地域社会への貢献を果たすことができる、多大な可能性を秘めた施策でございます。本記事でご紹介した地域選定のポイント、施設要件、プログラム企画、そして実施に向けたプロセスをご参考に、貴社にとって最適なワーケーションを実現していただければ幸いです。
具体的な施設の選定やプログラムの企画にあたっては、各施設の担当者へ積極的に問い合わせを行い、貴社のニーズに合致する情報や提案を引き出すことが重要です。ワーケーションが、貴社の組織力強化と地域社会の活性化に貢献できることを心より願っております。